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パルジファル ワーグナー (クラシック音楽 ドイツオペラ)

会社という組織の中でまだまだ下っ端であった当事の私に、下っ端の現実は今でも全く変わらないのであるが、海外出張の日程を自分の好きなように決めることはほとんど不可能であった。それを考えればイースターの日にミュンヘンにいて「パルジファル」を観ることが出来たのは、偶然という言葉では片付けたくない非常に幸運な何かであったと思う。1998年4月12日のことである。

午後5時の公演開始までの時間をどうやって過ごしていたのか、今となっては記憶が無い。「アルテ・ピナコテーク」へでも行っていたのか、それともマリエンプラッツあたりをぶらぶらしていたのか。ただ日曜日なのになぜ長いワーグナーの楽劇を夕方の遅い時間から始めるのか、日本だったら午後2時くらいからが普通ではないかと考えていたことは、なぜだか少し覚えている。とにかく開演に時間になり、私はわくわくしながらバイエルン州立歌劇場へと向かった。

ターザンの様にパルジファルが登場するなどペーター・コンヴィチュニーの演出は一見奇を衒ったもののようにも取ることが出来るが、劇としての本質を的確に炙り出して行く。無難でつまらない指揮者という印象しかなかった当事の音楽監督であったペーター・シュナイダーには、その素晴らしい指揮に心の中で何度も誤解を詫びながら、私は目も耳も、身も心もワーグナーに委ねた。ここでは幕間の長い休憩時間もオペラの一部だ。日本では決して味わうことのできない独特の時間が流れている。終演はゆうに午後10時を回っており、ぐったりとしてはいたが、こんなに心地よい疲労感は初めてのことであった。

終わった後はUバーンに乗ってミュンヘン中央駅近くに取ったホテルへと戻る。その前に、夜の11時近くに開いているレストランは少ないので、前にも来たことがある「ヴィナーヴァルト」へ行って遅い夕食を取る。ヴァイスビアを飲んでも興奮が収まらない。誰かとこの気持ちを分かちたいが、残念ながら今日も猫はいないようだ。それにしてもワーグナーは、音楽的にも内容的にも崇高の極みに達した「パルジファル」の後、どこへ行こうとしていたのだろう。ビールを飲みながらそんなことをひとり夜遅いミュンヘンで考えていた。

欧州各地では、今日も「パルジファル」が演奏されるだろう。20年ほど前に「ヴィナーヴァルト」で自分に発した疑問は、いまだに答えが見つかっていない。ちなみに私がワーグナーの楽劇を日本以外で観たのは、この時一回きりである。
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魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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