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すぬおの日記 (番外編 その2)

つながる、つなぐ 
                                    すぬお作           

「そうきゅうではなくて、さっきゅうと読むのですよ」
「えっ、でも学校では先生も含めてみんな、そうきゅうだよ」
「でもさっそくと読んでも、そうそくとは誰も言わないでしょう」
「そうだけど……」
 今日はおばあちゃんに付き合ってふたりで買い物に来ている。きりっと和服を着こなしたおばあちゃんは、私の服装にもうるさい。もう高校三年生なのだから、身だしなみをちきんとしなさいと言う。私はじゅうぶんおしゃれをしているつもりなのに、おばあちゃんには分からないらしい。
 お昼ごはんのときもそうだった。
「ねえ、ハンバーガーが食べたい」という私に対しておばあちゃんは、
「おそばにしましょう」と言って譲らない。結局押し切られてふたりでおそばを食べた。

自分のものはあまり買わないくせに、知り合いへの贈り物やら、家族へのお土産やら、おばあちゃんの買い物はやたらに時間がかかる。何回、デパートの売り場を上へ下へと連れていかれたか覚えていない。さあ、そろそろ帰りましょうかと言われたときは、私は相当にくたびれていた。
「おばあちゃんとは考え方も趣味も合わない」と思った。
「漢字の読み方なんてどうでもいいし、服だってきちんときてるのに、いつもうるさい」
 片方の手に重い袋を持たされた私は、心のなかでぶつぶつ言いながら、デパートを出た。 外はもうすっかり暗かった。

「あっ、きれいなお月さま」
 夜空に輝く満月を見て、おばあちゃんと私は同時に言った。見たこともないくらい大きくて、明るくて、美しい月がかかっていた。
「初めて、こんな素敵なお月さま」と私は言った。
「ほんとね。おばあちゃんも久しぶりだわ、こんなお月さまを見るのは」
「おばあちゃん、お月さま、好きなの?」
「大好きよ、まだ小さかったころから」
 へえ、まったく私とは違っていると思っていたおばあちゃんだけど、いっしょなんだ
 私はちゃんとおばあちゃんとつながっていることを知って、なんだかとても暖かくてうれしい気持ちになってきた。
 そしてそっと手を伸ばすと、おばあちゃんと手をつないだ。
「私からもっとおばあちゃんとつながろう」
 おばあちゃんは少し戸惑いながらも、しっかりと私の手を握り返してくれた。きょう、いちばんおばあちゃんと近づいた瞬間だった。
 そのとき初めておばあちゃんから、微かにいい香りがしてくることに気がついた。
「いつも私がつけている香水を同じ匂いがする」
 びっくりしている私と同じ顔をして、おばあちゃんは私を見ていた。
「おばあちゃんも気がついたみたい」
 私はにっこり笑っておばあちゃんを見た。
 これからは、さっきゅうと正しく読もうと思ったし、おしゃれと身だしなみが違うということも分かった気がした。

「晩ごはんは、ハンバーガーを食べて帰りましょうか」と歩きながらおばあちゃんが言った。
「うん!」
 大きな声で返事をすると、私はおばあちゃんと手をつないだままで、ハンバーガーショップへと向かった。

おしまい
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魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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