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智恵子抄 高村光太郎 (新潮文庫)

これは私が買った本ではない。いつの間にか本棚にあった。私が小学生の頃だ。遠い昔のことなのはっきりと覚えていないが、確か父親が購入したと言っていた記憶がある。仕事関係の本はそれなりにあったが、小説とか詩とかいわゆる文芸作品はあまり読まなかった父であるので、なぜこの本を買ったのかよく分からない。ぱらぱらとページをめくってはみたが、小学生の私は理解することが出来なかったので、読み終えることもなく本はそのまま本棚の隅に置かれることとなる。

それにしても父はなぜ「智恵子抄」を買ったのであろう。喧嘩も多く、どうして結婚したのだろうと疑問に思うことがなかった訳ではなかった両親ではあるが、父は母の中に「智恵子抄」に通じる何かを見ていたのであろうか。それとも「智恵子抄」に通じるような自分を見つけたかったのであろうか。私には分からないところで繋がっていた夫婦の思いがあったのであろうが、残念ながらその事を、母にもそして本を買った当の父にも、もはや確認する術がなくなってしまった。

病気で入院中の母を父は懸命に介護した。単なる義務感を超えた何かを私は強く感じることとなる。「智恵子抄」の中の幾つかの詩が、小学生の時に読んだのとは全く違う意味をもって、私の中に響いて来る。やがて母を静かに送り出すと、父は大切な仕事をやり遂げたかのように、母の死から四ヶ月少しで後を追うように亡くなった。私には「智恵子抄」だけが残された。

実家に帰って本棚を探せば、父自身が買った文庫本の「智恵子抄」が残っているはずだ。本は小さいけれど、それは私とってとても大事なものだ。そしてこれからも私は、時々「智恵子抄」を読み返すだろう。それは父が母に対して何を思っていたのかを知りたいと思うことと同時に、私が妻と子供たちに対して、純粋な気持ちを持ち続けることが出来るのかという繰り返しなされる自分への問いかけでもある。
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No title

エストリルのクリスマスローズ sakiと申します。
メッセージありがとうございました。

>小学生の時に読んだのとは全く違う意味をもって

魔笛さま

”全く違う意味をもつ”
文学の素晴らしさは
ここに
ここにこそ
あるのかと
そう感じています・・・。




Re: No title

> saki様、

そうですね、だからこそ私はこれまで本を読んできて、これからも読み続けるのだと思います。

ありがとうございました。これからも、よろしくお願いいたします。
プロフィール

魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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