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桜姫 橋本一 (邦画 DVD鑑賞)

本格的な景気回復には程遠い現在の日本において、40半ばを超えた男が長く勤めた会社を辞めるということは、仕事に対してよほど自信があるのか、それともただの勘違いをしているのか分からないが、いずれにせよ大学卒業以来20年以上勤務して来た東映を退社した橋本一の決断には、一応敬意を表しておきたいと思う。

和泉聖治に次ぐ演出家としてTVドラマ「相棒」の演出に初期から携わって来た橋本が東映を辞めて独立したのは、昨年末のことだ。入社当時に澤井信一郎や降旗康男に助監督として師事しているとは言うものの、社員監督として撮った「探偵はBARにいる」の二作や「相棒シリーズ X DAY」を見た限りにおいては、もはやTVドラマの手法で2時間ドラマもどきの作品しか撮ることのできない橋本がフリーランスの演出家として、自らの作家性を打ち出しながら現在の邦画界に何らかの痕跡を残せるのか、独立の報を聞いてまず思ったのはその事であった。

もうおそらくは観ることはないだろうと思った橋本の映画であるが、「桜姫」をレンタルしたのは、吉本昌弘と共同とは言え、橋本が初めてシナリオを手掛けているという理由からである。TVドラマ出身の演出家が映画を監督した場合、全くと言っていいくらいシナリオを書かない事についての深い失望と嘆きについて、ここで改めて繰り返す必要はないと思うが、ピンク映画やにっかつで多くのプログラムピクチャーに脚本を提供し、またTVドラマにおいてもコンスタントに仕事を続ける吉本は、橋本の初めてのシナリオのパートナーとしては期待を抱かせる人選のように思えた。

しかし橋本は「桜姫」においても以前と同じ失敗を繰り返している。映画的なカタルシスを微塵も感じることのできない、TVドラマを見ているのと何ら変わらない二時間あまりの時間がただ流れていく。その理由は、例えばR-15指定にもかかわらず主演の日南響子の露出が足りないとか、演技が未熟であるため他の女優陣の中に埋没しているとか、安っぽいセットがリアリティを欠いて作品世界を薄くしているとか、主人公二人の情感の描き方が表面的なためにドラマが創出されていないとかでは決してない。会社と辞めてまで撮ったにもかかわらず、その決意が全く映画に現れていない点にある。橋本の経歴と映画のストーリーを考えれば、私が「桜姫」で見たかったものは、東映イズムの橋本なりの再現と具現化である。終盤近く、「ぢごくや」での戦闘シーンでは誰もが私と同じことを期待していた筈であるが、画面に展開されるのは安っぽいチャンバラでしかない。海の向こうの監督に比べて橋本には東映への愛情と敬意が徹底的に不足しているのか、「桜姫」に東映の風が吹くことは最後までなかった。

この10月から放送が開始されたTVドラマ「相棒 SEASON13」においても橋本は相変わらず演出を担当している。加えて、今年公開の「花と蛇 ZERO」も、来年公開予定の二本の映画「王妃の館」も「ズタボロ」も配給は東映だ。こうなると東映を辞める時に、仕事の保証という点で会社と何らかの契約があったのではないかと邪推をしてしまうが、橋本が本当の意味でフリーランスの映画監督として独り立ちするためには、東映との縁を早く切るべきだ。そうした新生橋本の誕生とそこから生み出される橋本独自の映画に、僅かながらではあるが期待をしてみようと思う。

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魔笛

Author:魔笛
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映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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