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なんぞ食べるがかね

「何か食べますか」を土佐弁で言うこの言葉は、幼かった私にとっては何かを買ってもらえるということが前提となっているのでたいへん嬉しいものであった。両親が共働きだったため、中央公園の近くに住んでいた祖父母の家に行くことが多かった私は、聞かれるとアイスクリームとか、パンとかその時のお腹の空き具合と気まぐれな嗜好によって思いつく物を答えていたが、たまには祖父母や叔父から、「寿司でも食べようか」と言われることがあった。そんな時、私は喜んでついて行った。

祖父母の家から近かったせいか、いつも行くのは中央公園横の「ひょっとこ寿司」であった。高知の伝統と言えば、さばやかますの姿寿司や押し寿司であるが、その頃も握り寿司はあった。ただ注文すると一度に三貫握られて出て来て、醤油皿を使わず刷毛でネタに醤油をつけていたように記憶している。わさびは当然抜いてもらうのだが、まぐろや白身魚などの生のネタは幼かった私には少し早かったのか、大好きでよく食べたのは蛸や鰻、それにお新香巻であった。同じく中央公園の近くには「味デバ」=味のデパートというその名の通り色々な物を食べることができる食堂ビルがあり、そこの餃子が大好きであった。今は大丸東館が建つ場所にあった「ねぼけ」では、お子様ランチそれにホットケーキをよく食べた。

そんなにお腹の減っていなかった時は、やはり中央公園横の屋台でたこ焼きを買ってもらって食べた。焼きあがると三個を千枚通しに刺して、ステンレスの四角い容器に入ったウスターソースにくぐらせて木舟皿に盛り付け、鰹節と青のりをさっと上からかける。マヨネーズを添えることなど決してなかった。また日が暮れる頃になるとワゴン車でホットドッグを売りにくる。コッペパンを二つに割って中にカレー味のキャベツを入れて注文した具を挟んでオーブンで焼く。夜にお腹が空いた時など、ハムのホットドッグを何度か買ってもらった。

記憶を辿ってここに書いた物はもう高知からは消えてしまった。寿司は二貫で供されるようになり、醤油皿が添えられる。餃子や、お子様ランチそれにホットケーキを食べた食堂も無い。たこ焼きに付けるのは中濃ソースになりマヨネーズがかけられるようになった。暗くなるとどこからともなく姿を現していたホットドッグのワゴン車は何時の頃からか見なくなった。そして何より中央公園そのものが大きく変わってしまった。真ん中にあった噴水も藤棚も撤去されて、変わらないのは立志社跡の碑だけである。新しく隣に建った「自由は土佐の山間より出ず」の石碑に違和感を覚えつつも、立志社跡の碑の前に行くと、漢字ばかりで何を書いてあるのかよく分からないまま、それでも一所懸命に読もうとしていたあの小さかった日のことを思い出す。時代が変わることは、風景が変わることは宿命であるが、それでも中央公園の周りを歩くたびに、自分の中に変わることなく持ち続けようと思う何かがあることに気がついて、少し驚いた。
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魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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