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ジョゼと虎と魚たち 犬童一心 (邦画 映画館鑑賞)

取り分けて興味がある訳ではないし、顔と名前が一致しない、いや名前すら知らないメンバーがほとんどのAKB48であるが、「セーラーゾンビ」は毎週楽しく見ている。出演者の演技についてここであれこれと言うことはしない。彼女たちは一所懸命に取り組んでいるし、何より若くて十分に可愛い。取り急ぎ他に要求することはない。下手をすれば学芸会に終わりかねないこのTVドラマを支えているのは、総合演出で脚本も手がけている犬童一心の功績だろう。はるか昔、池袋の文芸地下で観た「赤すいか黄すいか」もとても面白かった記憶がある犬童は、映画監督が持つべき資質を備えているようだ。しかし「ジョゼと虎と魚たち」が映画として非常に感銘をもたらすのは、犬童の演出と言うよりも渡辺あやが書いたシナリオに負うべき点が多いのではないかと思う。

私は残念ながら「ジョゼと虎と魚たち」を封切り時には観ていない。ただその時、映画を愛する人たちが素晴らしい才能を持った新しいシナリオの書き手の出現を心から歓迎し、同業者たちは渡辺の才能に心から嫉妬したであろうことは容易に想像できる。一見奇妙だが、壊れそうに繊細で切なく美しいこの映画を形作っているのは紛れもなく渡辺のシナリオである。さりげない描写から登場人物の輪郭を際立たせる見事な人物描写や、無理のない言葉から映画的なイメージを喚起させる巧妙な台詞など、映画の脚本の書き手が払底する中で渡辺の存在は光っている。

2009年にNHKが制作したドラマ「火の魚」でも渡辺は素晴らしいシナリオを書いている。老いや不幸や死がおそらくは一般の人よりも身近に座っている老作家と若い女性編集者のドラマを渡辺は見事な筆で描いて行く。特に二人が作家と新人編集者と言う表面的な関係から、本音をぶつけあってお互いの理解へと進むプロットポイントの書き方は印象的だ。わずか三人の作家の名前を挙げさせることによって一気に二人の間にあった壁を取り除いてしまった構成力は、どんな台詞を重ねるよりも効果的で説得力がある。渡辺は2011年以降全ての個人的な賞を辞退している。この年2009年に、「火の魚」に向田邦子賞を与えることができなかった審査員はその不明を恥じるべきであるであるし、偉大なシナリオ作家であった向田邦子の名前と賞の存在意義、信頼を傷つけた重大な過失であった。

最近の渡辺はNHKの「カーネーション」や「ロング・グッバイ」とTVでの仕事が中心となっている。映画のシナリオの書き方も文法も知らないTVドラマ出身の脚本家が大量にスクリーンに進出して映画を壊している現在、渡辺に映画に帰って来て欲しいと思っている人は私だけではないはずだ。いつ渡辺は映画に戻ってくるのだろう。はっきりとはしないがそれまでは、「火の魚」の中で老作家の質問に答えて女性編集者が挙げた三人の作家、カポーティ、チェーホフ、横光利一でも読みながら、静かに待っていることとする。
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魔笛

Author:魔笛
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映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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