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ならず者 石井輝男 (邦画 映画館鑑賞)

その日私は、池袋の新文芸座へ高倉健の特集を見るために出かけていた。いやむしろ監督の石井輝男が目当てだったのかもしれない。技術に裏打ちされながらも決して娯楽と言う枠組みを外すことなく、独特とも言える美学を貫いた映画を撮り続けた石井は、素晴らしい監督だ。香港を舞台に高倉健が主役の殺し屋を演じる「ならず者」は、丹波哲郎や南田洋子等の豪華な共演陣と繰り広げられるスリリングなストーリー展開、そして敵組織との対決シーンから切ない幕切れまで、私を映画の愉悦の中へどっぷりと浸してくれる大好きな作品である。

一本目の「ならず者」を見終わって、座席数の割には小さくていつも混んでいるトイレへ行って席に戻って来た私に、見知らぬ男がいきなり「なあ、健さん格好いいだろう。俺は大好きなんだよ、兄さんも好きなのかい?」と話しかけてきた。明らかに酒を飲んでいるように見えた六十過ぎのその男は、ひとしきり高倉健の魅力を私に語ると満足したのか、のろのろと別の席へと移動した。男は石井の映画でも高倉の映画でもなく、今日は「健さん」の映画を見に来ているのだということを私は知った。

男が去って間もなく上映が始まった二本目の「東京ギャング対香港ギャング」も面白かった。その時一緒に映画館に居合わせた観客の中でも、どれだけ映画を楽しんだという事に関しては、私は相当に自信がある。しかし口惜しいことに先ほどの男には敵わないであろう。間違いなく一番楽しんでいたのはあの男だ。嫉妬にも近い気持ちを抱きながら明るくなった場内で男を目で探してみたが、退席をする人に紛れてか見つけることは出来なかった。もう少し「健さん」の話で絡まれてもいいなという気持ちもあったが、男はどこかへ行ってしまったらしい。私もゆっくりと席を立つと、映画の余韻に浸りながら出口に向かって歩き始めた。

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魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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