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なんちゃあのってないがかえ

「何ものっていないのですか」を土佐弁で言うこの言葉は、某TV番組で具がたくさんのっている高知のそうめんとは違い、つゆだけで食べる関東のそうめんを見せられて、帯屋町を行く今風の若い女性が思わず口にしたことである。今では全国規模で展開するチェーン店も多く見かけるようになり、形の上では均一化が進んでいるように思えた高知でも、まだまだ地元の意識と習慣が若い世代にも自然な形で受け継がれていることを知って嬉しい気持ちになったことを覚えている。

大晦日の日、大掃除も終わって午後2時くらいになると、実家ではぜんざいとみつ豆、そしてそうめんを作り始める。暗黙の了解で主に母がぜんざいとみつ豆、祖母がそうめんを担当していた。水で戻した干し椎茸で出汁を作り、上にのせる具となる玉子やすまきや小海老、それに甘辛い椎茸となぜか缶詰のさくらんぼも必ず一緒に準備される。他の家の事情は分からないが、私の実家ではぜんざい、みつ豆、そうめんは正月に欠かせない料理であった。夕方になると仕出し屋から皿鉢が届けられる。それらを全て机の上に並べて新聞紙を被せて正月を待つのであるが、実際は年が明ける前に「紅白歌合戦」を見ながら、晩ご飯として皿鉢料理を家族でつつくことになる。私はその中でも特に、大きな皿から具とともに小さな器に取り分けて、上から椎茸香る薄い色のつゆをかけて食べる高知のそうめんが大好きであった。

上の子供が生まれて一年経ったころ初めて高知で正月を過ごした。祖母は随分と前に亡くなっていたが、母も父もまだ健在で、その時は昔と同じように皿鉢料理を囲んでゆっくりと皆で正月を迎えた。年を取った母には料理もたいへんで、ぜんざいとみつ豆は無かったが、そうめんだけは作ってもらい、久しぶりに椎茸の出汁の効いたつゆで食べる具だくさんのそうめんを堪能した。高知では1歳になった時に背中に一升の餅を背負って、並べたそろばん、扇子、お金の中から何を選ぶかで子どもの将来を占うという風習があるが、その時の正月に実家でも行った。母がわざわざ「中納言」から買ってきてあった紅白の大きな餅をものともせずに、子供は一直線に千円札に向かって駆けて行くと得意顔で手に取った。お金を選んだ子供は一生金銭に困らないと言われているのだが、実際はどうなのだろう。将来の成りたい職業としてケーキ屋と科学者と作家を挙げる上の子供は、印税の仕組みを話すとたいへん興味を示すが、それはあの時に迷いもしないで千円札を選んだことと関係があるのかもしれない。

大きくて重い餅を背負わされた本人は大変だったであろうが、それを微笑ましい目で見つめていた母と父の姿を私は思い出す。残念ながら母はだんだんと体調を崩しがちになり、下の子供は高知で「背負い餅」の儀式を行っていない。その後も何回か家族で高知へと帰ることはあったが、皿鉢料理を囲んで家族で過ごした正月はこの時が最後となってしまった。そうめんもそれから食べていない。二人の子供は順調に大きくなっているが、母も父も亡くなってしまった今、私の時間は時々あの正月の日で止まってしまう。もう一度針を動かすために、久しぶりにあの具だくさんのそうめんをこちらの家でも作って、家族で食べたいと思うことがある。
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No title

お正月に、みつ豆とそうめんは珍しいですね。
そうめんは、温かいやつですか、冷たいやつですか?

皿鉢料理、いろんな料理をどーんと眺めて食べられて、
楽しく美味しいですよねー。
昔、安芸市にご実家のある知人にもてなされたことがありました。
ご返杯の繰り返しで、朝、酔ったまま
蓮の花が音を立てて開くのを見に行きました。

Re: No title

> つかりこ様

そうめんは冷たいつゆをかけて食べます。皿鉢に盛られているちょっと酢の効いた鯖や鯵の姿寿司の後に食べると、特に美味しく感じます。他の家ではわかりませんが、実家ではぜんざいもみつ豆も普通でした。高知県人は基本的に甘いものが大好きです。寿司醤油にも砂糖が入っているくらいですから。

蓮の花の咲く音というのは話は知っていますが、実際に聞いたことはありません。どんな音なのでしょう。一度この耳で確かめてみたいものです。

ご訪問ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
プロフィール

魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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