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シャトー・パルメ 1975 マドンナ (フランスワイン)

そんなに昔のことではないが、浅草の雷門のそばの路地を左に曲がってほんのすぐの所に「マドンナ」というべたな名前のイタリア料理店があった。ガイドブックの類にはあまり掲載される事がなかったように思うが、ふとしたことからこの店を知り何度か訪れた。シンプルではあるがストレートに素材に向かっており、私の嗜好にはたいへん合った数々の料理を楽しむことができた。特に仔羊を焼いた料理は、付け合せもなく無造作に皿の上に載っているだけなのであるが、かえってその潔さが心地よい。仔羊は火をしっかり通した方が美味しいと個人的は思うのであるが、他のレストランで食べる仔羊のレアにも近い火の通し方にいつも不満を感じていた私は、しっかりと肉の中まで火が入った「マドンナ」の仔羊の料理が大好きであった。

料理も素晴らしかったが、この店でもっと楽しませてくれたのはワインである。もとよりイタリアワインに詳しいわけではないが、尋ねれば一見無愛想に見えるソムリエを兼ねたサービスの男性はきちんと丁寧に答えてくれ、名前も知らない美味しいワインを出してくれた。古いヴィンテージのワインが飲みたいと当日に無理を言った時は、時間がかかるものもありますのでよろしければ次回に来るときに予め教えて下さいとのことで、別の日に予約をする時に電話でお願いをしたら手頃な値段の古いヴィンテージを来店に合わせて準備していただき、少し枯れた感じのそれでも十分な力の残ったワインを楽しく飲ませていただいた。

もとより常連が多かった店である。何回目かの訪問時に、美味しい料理と比喩ではなく本当の意味で美味しいワインに酔ってしまった私は、別の席で何本かワインを開けて楽しそうに語っている常連と思しきテーブルに失礼も顧みずに近寄って行って一緒に話に入ってしまった。その時にご馳走になったのが「シャトー・パルメ」の1975年のヴィンテージである。酔っていたにもかかわらず、今だに年号まで覚えているほどそのワインは美味しかった。華やかさが口と喉と頭を魅了したワインであった。メルローがあまり好きではなかったので、メルロー種のブレンド比率の高いワインに対して偏見を持っていたのであるが、「シャトー・パルメ」はそんな私の思い込みを軽く吹き飛ばしてくれた。

私はワインのこともワインの産地のこともワインの蒲萄の品種のことも詳しいわけではなく、浅薄な知識しかない。それにもかかわらず通ぶって店では話してしまう。もちろん心優しきソムリエ達は、そんな私でもきちんと相手をしてくれるが、ワインについてほとんど何も知らないということは自分自身が一番よく分かっている。しかし酒のさかなとしてこの手の話はとても楽しい。ちょうど高知の男が酒を飲めば誰しも幕末の志士になったような気分になって、熱く天下国家のことを語りながら、その議論をさかなに酒を飲むことと少し似ているのかもしれないと思う。

残念ながら「マドンナ」は閉店してしまったので、私に「シャトー・パルメ」の美味しさを教えてくれた恩人に同じ場所で会うことはできない。ただもしどこかでお会いすることがあれば、お礼を十分に述べた上で、ワインのことはほとんど何も知らないことは自覚しつつもやはりワインの話をしてしまうのであろう自分自身を想像することは、そんなに難しいことではない。
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No title

ワインのことは全然わからないのですが、
赤ワインでラム肉料理を食べて、ハッピーにならない人はいない
ことくらいはわかります。
(羊肉が嫌いな人もいますが・・・汗)

Re: No title

> つかりこ様

コメントありがとうございます。そうですね、とても幸せな時間です。牛肉はあまり好きではないようですが、仔羊とワインは大好きだという同じ嗜好を妻が持っていることに感謝しています。

これからもよろしくお願いいたします。
プロフィール

魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

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