スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

干し柿 (日本)

香港へ行けば例えば尖沙咀のような大きな観光地でも少し路地を曲がれば乾物を売っている店がたくさんある。鮑やふかひれのような高価な物から、貝柱や蝦など手の届く物まで色々と並んでいるが、見事な飴色に干された海山物を見ていると思わず買ってみたくなる。実際に干し貝柱を購入したはいいものの、料理もろくにしなかった独身時代なので結局無駄にしたこともあるし、また正月に煮しめに入れると抜群に味が良くなるということで、友人に頼まれて買ったこともある。中国の人は干すことによって元の食材が全く違った美味しさを持つことをよく知っている。しかし太陽の力の偉大さを熟知しているのは何も中国人に限ったことではない。野菜を干した物、果物を干した物、あるいは魚介類でも干物として食する物、陽の光によって多くの物は世界各地で保存性と味の向上を兼ねた素晴らしい食べ物へと変わって行った。

私は昔からドライフルーツが好きで、今でもお茶請けや酒のつまみにとレーズンやドライマンゴー、たまにはドライパイナップルまでよく食べる。どれもたいへん美味しく、ついつい食べ過ぎてしまう。ただ干した果物の中で一番好きなのは、おそらく「干し柿」である。ドリアンも含めてほとんど苦手な果物がない私であるが、正直に言うと柿だけはそんなに好きではない。噛んだ時の食感と口の中に広がる独特の甘さが私の嗜好から外れているのである。しかし干すことによって水分が抜けて甘味も適度に凝縮された「干し柿」は本当に大好きだ。生では食べることのできない渋柿が干すことによって全く違った食べ物になるという不思議さに惹かれるところがあったのかもしれない。そういえば、甘柿で「干し柿」を作ってみようとして親に叱られたことがあったように思う。冬になれば高知で「やぎり」と呼ばれる洗濯物を干す場所に、買ってきた渋柿を吊るして干して、日々少しずつ変化する柿の色と形状にわくわくしながらできた「干し柿」はとても美味しく、今でも頭と舌の両方でしっかりとその味を記憶している。

実家には小さいながらも庭があり、梅の木も植えてあった。梅雨の季節になると薄い緑色の実が生った。それをとって梅干をつけたり、梅酒を作ったりした。もちろん小さな梅の木一本から収穫できる実はわずかであるので、足りない分は市で買って来た。瓶の中の、毎日の変化は僅かであるがそれでも確実に別の物になって行く梅の姿を見ることは楽しかった。しかし私が小学校の高学年になった頃であったか、父が鯉を飼いたいと言い出し池を作ることになったので、梅の木は抜かれてしまい代わりに松の木が植えられた。同時にだんだんと梅干も梅酒も作らなくなってしまい、それと合わせるかのように「干し柿」を家で作ることも少なくなって行った。

大好きな「干し柿」であるが、他のドライフルーツのように店で買って来て食べることはない。思い出して見ても随分と長い間食べていない。私にとって「干し柿」は買って来て食べるものではなく、家で作って食べる物なのだ。現在住んでいる家にはわずかな洗濯物を干すスペースしかないが、それでも無理をすれば家族で食べる分くらいはなんとか「干し柿」を吊るすことができるかもしれない。次の冬は是非とも渋柿を幾つか物干し竿に下げて、久しぶりに「干し柿」を作ってみようと思っている。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

「干し柿」や「干し芋」、「梅干し」というのは、
昔はどこの家庭でもひとつやふたつ軒下や物干し台で作っていたものですよね。
子供の頃は、「まずいものを手間をかけて作るか」と思っていたのですが、
いまはどれも贅沢な食べ物のひとつになってしまいましたね。
おっしゃる通り、味だとか保存食だとかのほかに、豊かさを感じられる食べ物ですよね。
そのことに気づくのに、何十年もかかってしまいました。
子供の頃に接して、大人になって接して、自分でもやってみないと、
次の世代に伝えられないもの。

Re: No title

> つかりこ様

コメントありがとうございます。

確かに最近は軒下や物干し台に何かが吊るされているという光景を見ることがほとんど無くなってしまいました。残念ながら我が家もその例に漏れません。ただ幸いなことに今でも妻の実家では義理の母が梅干を作っており、子供たちは出来上がった梅干の味だけでなく作る過程も大好きです。子供たちが私と妻、両方の家から多くの物を受け継いで、次の世代へと繋いでいってくれれば親の私としてはこんなに嬉しいことはありません。

これからもよろしくお願いいたします。
プロフィール

魔笛

Author:魔笛
大好きなものを綴った日記です

映画:ハリウッド映画からピンク映画まで
本:ジャンルを問わず小説が中心
食べ物:フランス料理とイタリア料理が好物
旅行:なかなか行けませんが欧州とアジアが好き

大好きなものを語る場合、時として辛口になることもありますが、愛情の裏返しということでご容赦下さい。また文中敬称略であることもご勘弁願います

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。